アーティストは芸術家であり創造者です。
これは、営業に当てはめることができるか?
営業は、刻々と変化するマーケットの中で売上に貢献して利益を創出します。
そのため営業は、お客さんを幾度となく訪問して、自社の商品、サービスを売り込み、契約をとるためのアプローチを繰り返します。
その際、営業のやり方、トーク内容は、お客さんと対峙した中での状況対応、丁々発止のやり取りです。
受注のステップは、業界によって基本パターンというものがあります。
この基本パターンは、一般的な営業活動に共通する部分を含んだ基本姿勢に業界特有の営業手法が盛り込まれたものです。
そこで、お客さんの視点から見れば、訪問してくる営業パーソンは、みな同じパターンでアプローチしてくるとなると、各社の営業パーソンの微妙な差異や商品力が判断の基準になります。
ここでのポイントは、営業パーソンが同業他社と同じアプローチをしていたのであれば差別化につながらないということです。
つまり各社の営業パーソンは、独自の企業色、営業色、パーソナリティを発揮しなければ差別化にならないということです。
そのためには三つのステップ踏む必要があります。
・第1ステップ
どうしても受注をしたい案件であれば、営業パーソンに部長、課長が同行営業をし、お客さんのニーズを再把握する必要があります。
これは企業のぜひ受注したいという姿勢を見せるだけでなく、会社を挙げて、直接訪問して他社とは違う差別化の切り口をあぶり出すというリアルな必要性があるのです。
この差別化の切り口は、提案内容に反映され、斬新でお客さんのハートをわしづかみするような内容でなければ意味がない。
この提案は、お客さんさんのニーズの再収集からあぶり出した「当社は本音のところで、何を満足させて欲しいか」を解決するものでなければならない。
本音のニーズは、以前聞いたニーズ内容とは当然違ったものであるはずです。
もしニーズ内容が同じということであれば、新しい切り口の提案はできない。
このポイントに徹底的にこだわろう。
そのための上司同行によるニーズ探査の訪問です。
当然上司の責任は大きい。
上司はお客さんの担当者へのヒヤリングによって「本音で何に困っていて、何をしてほしいのか、外部のサービス、商品に何を期待しているのか」を聞き出さなければなりません。
場合によっては、お客さん自身、表面的なニーズしかつかんでなく、深いところの本音のニーズに気づいていないというケースも多々あります。
このようなケースがあることも前提にして、深くニーズ探査をやるのです。
そこでは、新しいニーズの発見ができ、お客さんも新しい気づきに気づいて両者が納得するというのが肝です。
新発見したニーズは、営業サイドだけでのあぶり出しで、お客さんを巻き込んでないというのでは片手落ちです。
・第2ステップ
第2ステップは、新しいニーズをもとにした提案書の作成です。
提案書の作成ポイントは、お客さんに何を訴えたいかを明確にしたドラマチックな構成にしなければいけません。
単に起承転結の流れではなく、結論から話を展開しましょう。
つまり当社は、何を売りにしてお客さんの課題を解決し、お客さんのニーズを満足させることができるかを最初に打ち出すことです。
そして、なぜそうなのかを証明するためのドラマが、後に続くという流れです。
まさにお客さんの印象を大きく作用する見せ方に、力点を置くのです。
また見栄えの良さというのも大きな判断要素になります。
提案書は、レイアウト、色使い、キャッチコピー、文言など緻密な計算のもとで構成していく必要があります。
これは後でお話ししますプレゼンテーションのやり方にもつながってきます。
そして、急がなくてはいけないことは、たたき台となる提案書の枠組み作りです。このたたき台を速やかに作ることによって、複数者によるアイデアの収集、構成の修正、訂正が段取りよく行えるのです。
ここは、たたき台を推敲するために、全体のプロセスの中で一番時間をかけるところです。
・第3ステップ
提案書ができれば、あとはこれをどうプレゼンテーションするかでです。
このステージでは、この案件にかかわったメンバーだけでなく、客観的に判断できそうな人材も加えて実際にシミュレーションをやることです。
発表者を決めて、その本人が何度となくみんなの前で練習する必要があります。
提案内容は有効であることを前提に、演劇を演じるように相手のハートに取り入り、心を動かすトークに仕上げなければいけません。
お客さん視線で、どういう言葉が有効で、間の取り方、強調すべきポイントでの声の強弱など、細かくチェックする必要があります。
緻密に構成し、段取りをチェックすればするほどばシンプルで、強弱のメリハリがはっきり打ち出せるプレゼン内容になっていきます。
プレゼンテーションは一回きりです。
この一回を悔いのないものに仕立て上げて、ぜひ成功してもらいたいです。
もし万が一にも受注につながらなかった場合でも、徹底的にその敗因を分析してください。必ず次回の提案に活きてきます。
このように考えていきますと、まさに営業パーソンはアーティストということになります。
新しい変革をたえまなく打ち出していくことは、まさにアート、芸術活動そのものです。